アッシュが死んだ… そんな言葉が口に出せたことがおかしいぐらい、ルークの心が身体が錯乱をしていた。 すぐさま、一番の反応を示したのはナタリアで、泣き叫ぶようにルークは問い詰められる。 でも、事実がこの身体に一番宿って、第二超振動の発動さえ得てしまった。 なにもかも実感する間もなくシンクが襲ってきて、無我夢中に彼を倒した。 そして、最後にルークたちを向かえたのはヴァンだった。 待ちかねたかのように立ち上がって、いくつかの言葉のやりとりを交わすが、それは両者の主張をぶつけ合うだけで、何の解決にもならなかった。 強い者が正しいわけではないし、オールドラントを決めてもいいものでもない。 でも、その道しか双方選べなくて、ルークは仲間と共に剣を取ってヴァンへと向かっていった。 ヴァンは多勢に無勢にも関わらず、驚異的な強さを見せ付けた。 正直、歯が立たなかった。ローレライを解放するまでに至らない。 第一にルークにはアッシュが死んでしまったという心の乱れが付きまとっていた。 やがて仲間が一人倒れ、二人倒れ………それでも最後まで辛うじて立ち上がっていたのはルークであった。 剣をろくに握る力もないルークの目の前に、ヴァンはゆっくりとやってくる。 そしてもう一度、自分と一緒に来いと投げかけて、手を差し出した。 「おまえはレプリカだ。レプリカの世界で、受け入れよう。」との言葉を加えて。 それでもルークはそれを断った。 「なら、自分の目でその世界を見てみるがいい。」 ルークの価値を見出したヴァンはそう指示し、ローレライの力を解放してルークを第七音素の光球に包ませた。 てっきりルークは自分はこのまま死ぬのだと思っていた。 しかし目を覚ますと、そこは確実に死後の世界ではなかった。 そう…いつものバチカル、ファブレ公爵邸の自室にいたのだった。 夢かと思ってあわてて屋敷を歩いてみるが、そこには父上も母上も他の使用人もいつものように居て、なんら変わりがなかった。 ただ、会話をしても到底話がかみ合わなかった。姿形以外に合う物がない。 そして皆は口々に言った。 ここは、レプリカだけの世界で、自分たちはオリジナルの役割をそっくりそのままこなしている。と。 もちろん彼らにオリジナルの記憶は、何ももっていない。 しかし、同じ人間であるからして、ある程度の基本的な刷り込みをさせられた、そのレプリカたちは何の支障もなくオールドラントに住んで、新しい世界を築いていたのだった。 それは、とても幸せそうであった。 レプリカの世界が完成する前…つまりオリジナルが生きていた頃を知るレプリカは、言う。 「オリジナルの世界にいても、結局は迫害をされて否定される身だと。」 確かにそうだった。ルークもそれを味わった。 これが幸せなんじゃないかと錯覚にさえ陥るように。 そう思い始めたときに、ルークの前に現れたのはヴァンだった。いや、正確に言うとヴァンのレプリカではあるが。 レプリカであるということはわかっていたが、ルークはヴァンを問い詰めた。これは一体何なのか?と。 ヴァンのレプリカはオリジナルの意思を受け継いでいたので、事実を淡々と語る。 これは、ローレライの力を使って、近い未来の幻をルークに見せているのだと。 そして今までルークが知らなかった事実である、大爆発現象を教えた。 このままでは、完全同位体であるルークは死んでしまい、大爆発現象にてオリジナルであるアッシュが生き残るだけだと。 レムの塔で力を使いすぎたルークは放っておいても、このまま死んでしまう。何とかしてやろう。 そして改めて自分に協力するようにと、ヴァンは言った。 その答えを返そうとしたとき、突然光球に包まれてしまい、ルークは再び意識が飛んだ。 今度は戻ってきたようで、また同じく対峙した状態ではあったが、エルドラントでヴァンと向き合った。 ヴァンは、自分が仕組んだことであるから全てわかっている。そしてルークの答えを待っている。 待ち望んだ何度目かのルークの答えは、「協力はしない」ときっぱりとしたものだった。 ルークは、やっとアッシュが死んでしまったという迷いを捨てきることが出来た。 レプリカの世界には、何よりもアッシュがいない。それはオリジナルだから。 あそこに居たのはアッシュじゃなくて自分だということに気がついたのだ。 ルークは、自分自身よりアッシュを取った。ルークからすれば、至極当然で当たり前なそれを。 身体は動きさえすれば良い。再び剣を取って、ヴァンへと立ち向かった。 文字通りの死闘…そしてようやく第二超振動が発動し、ヴァンを断ち切ることが出来た。 栄光であったエルドラントが崩れ行く中、ローレライを解放する。 ルークは最後に、アッシュが生きれる未来を示して幸せに死んでいったのだった。 アトガキ 私が考える話は、大抵最後にルークが死にます…すみません。 2007/04/11 back menu next |