節分―― 立春の前日という一年に一度だけ訪れるその日が、意気揚々とやってきた。 それほど派手なイベントではないが、ささやかなそのしきたりはオールドラントでは周知な出来事であった。 屋敷に軟禁されていたとはいえルークもそのイベントは知っていて、一応形式的に毎年自分の年の数だけ豆を食べている。 物心着く前から身体だけは一丁前に出来ていたから、昔から食べてはいたのだろうけど、 ルークはこのイベントがあまり好きではなかった。 二十歳になったら軟禁は解ける…そのカウントダウンの永さがあまりにもありすぎたから。 こっそりと二十粒食べようと、結局何も変わりはしない。 事実、淡い思いを抱いて何度かやってみた。駄目だった。 だから、どちらかというと嫌いな部類に入るイベントであった。 十七歳のルークの節分は、旅の途中にやってきた。 初めての屋敷外でのイベント。 誕生日に当たり前のようにたてられたローソクと同じように、渡されたのは十七粒の豆であった。 預言とはまた少し違うけど、縁起物みたいなものだから…と、周りのみんなは至極当然のように年齢分だけの豆を食している。 しかし、ルークだけは手が全く進まないでいた。 ただじっと、手のひらに置かれたその豆を見つめる。 そのルークの様子に気がついたのは、やはりガイであった。 ルークの本当の年齢は十七歳ではない。 身にある身体の年齢は確かにそうなのかもしれないが、実質は七歳児である。 たった、七年… 多すぎる豆にどうしようかと戸惑っているのかと、てっきりガイは思っていて 「別に全部食べる必要はないと思うぜ。本当の年齢の分だけ食べろよ。」 と、気をかけていってくれる。 しかし、ルークは 「俺には食べる価値は一粒だってないのかもしれない。でも………」 自分はレプリカだから、完全な人ではない。 七粒だって、食べてもいいものなのだろうか? 何も知らないまま食べてきた今までの七年間は、自分は何もしなかった。 わからないで全部すませて逃げてきた。 だから、アクゼリュスであんなことを……… ルークは豆を食べる。 一粒一粒噛み締めてゆっくりと。 どんなときでも、ルークはアッシュと同じでありたかったから。 最後の…十七粒目を口にした。 他はどんな罰でも受けるから こんな、ささやかな我侭だけは、許して下さい。 アトガキ アッシュは、10歳のあの時以来食べないから、やっぱりすれ違いとか? 2007/02/02 back menu next |