[PR] アウトソーシング      ル フ ラ ン     
  村時雨アニマリズム  2










ずっと思っていた。
彼は、同情して自分のことを好きになってくれたんじゃないのかと。





アッシュがイライラしていることだけは、わかった。
そして、その原因が自分にもあることもじわりと感じ取れるが、なんでそんなにも怒っているのかはわからない。
また以前のように拒絶されるのが怖い………
その思いだけが、今のルークを取り囲む心配で、心が弱いから不安でたまらなかったのだ。
確かに昔の自分は酷いもので、彼に認められるという方がおかしいとはわかっていたから、思いを伝えた後は、彼に見合う人間になろうと必死だったのに。
目の前で拒否されるなら、何も見えないようにいなくなってしまう方がずっと良かった。
だから、ルークは勝手に足が逃げた。

わけもわからないくらい走って部屋に辿り着くと、バンッ!と乱暴に開けた扉を完全に閉めようとした。
その瞬間、扉の向こうから伸びてきた手に手首を掴まれて動けなくなった。
「放してくれ。」
この腕が誰のものなのかは痛いくらいわかったから、切羽詰まった声でルークは言う。
「ルーク。落ち着くんだ。」
突然癇癪を起したようなルークに戸惑いながらもアッシュは宥めることで手一杯だ。
このまま一旦手を放して、合鍵でも何でも使えば無理やりにでも開けることはできたが、それでは意味がないから。
しかし、怯えたルークは本能のように、掴まれた手首をくるっと切り返して無理やり外した。
本来ならばこんなことにつかうために護身術を習っていたわけではないが、皮肉なものだ。
結局これが自分にできる精いっぱいの抵抗なんだとはわかっていたけども、腕を解放されたルークは、扉を閉めることはあきらめて、急いで部屋の奥の窓に向かった。
長らく使っていなくて油の差しが甘い窓をギシリッと開けると、颯爽とルークは窓枠から下りた。
とんっと、軽く着地した先は吹き抜けのバルコニー。
海側の広いバルコニーでは文字通りマリンブルーの水平線がのぞめるはずだが、大雨が今でも続いているせいでそれを臨むことは叶わなくなっている。
雨は降り止むことを知らぬように、ルークにただ注ぐ。
と、そこまで逃げられては、アッシュとしても躍起になる。
腰ほどの高さの柵から隣の部屋へ繋がるバルコニーへ飛び移ろうとしているルークを力任せに引っ張った。
「…え…、あっ…」
後ろに押されたことでバランスを簡単に崩して、トスンッとアッシュの胸にルークは落ちる。
アッシュは後ろから深くルークを抱きしめた。
強く、絶対に離さないように。

「こっちを向いてくれ。」
「…無理だよ。出来ない。」
やっぱりルークは彼を真っ直ぐ見ることが出来なくて、震えた子供のようにうつむいて、絶え間なく水が滴る下しか見れない。
むしろ、外してほしいと暗に示すために、胸に回されたアッシュの腕に手を添える。
彼を見てしまっては逃げてしまったことに対して余計に辛かったから。
「さっきは怒鳴って悪かった。だから、もう逃げないでくれ。姿を消さないでくれ。頼む…」
アッシュは、ぽつりと言葉を始めた。
「………」
ルークは、自身を掴んでいる彼の手に力が入るのを感じ取る。
冷たい雨の中で、温かさを感じるのは密着している互いの体温だけで、濡れ続けるのも構わずにアッシュはそのままの体勢であり続ける。
「…俺こそ、ごめん。驚いて。また嫌われたかと思ったんだ。」
まだ、面と向かっては正面を向くことは出来ない。
顔が見れないことに後ろめたさはあったけど、ルークは素直にそう話して、突っぱねようとして添えていた腕から手を外した。
「嫌う?」
妙な言葉が出てきたのでアッシュは思わず反復する。
何でそこまで大げさに言われているのか、直ぐには理解できない。
「だって、アッシュ。凄く怒っただろ?」
後ろから抱きしめている状態ではルークの表情は見られないが、ふてくされたような声だけはきちんと聞こえる。
「あれは、お前があんな場所で寝ていたからだ。」
「あんな場所って、確かに寝るような場所じゃなかったけどさ。」
それくらい…とルークは言葉を続けたかった。
「あの機械は、フォミクリーの実験用音機関だ。そんな近くで寝ていたから、またお前が死んでしまったかと思ったんだ。もう心配はかけないでくれ。」
もたれこんで動かないルークを見た時は、息が詰まってどうしようもなかった。
始まりの場所で死ぬ姿を見る恐怖。
たとえ消えてしまったとしても諦めはつかないが、それ以上の畏怖だった。
朽ち果てたと思った身体に反応があって、救われたのはこっちの方だ。
「あ、そう…だよな。俺、何も考えてなくて…」
機械自体は無影灯だったし、音素乖離とかそんな危険は考えなかったのが本音で、本当は自分が生まれた時なんて全く覚えてはいない。
以前、あそこで自分が作られたのだと聞いたときは、直ぐには理解が出来なくて。
レプリカのことを調べるために簡単に勉強もしたけど、第三者的にしか思いたくなかったのかもしれない。
モニター装置にかけられ、スキャンされたオリジナルの情報を入れられ、オーロラがあったのか、曖昧だ。
ともかく今は、アッシュを疑ってしまったことの方が気まずい。
酷いことをしたのはルークの方だったのだ。
「責めているわけじゃない。俺も、気にしすぎたからな。」
アッシュは力の抜けたルークを引き寄せて、首筋にキスをする。
思わぬ出来事に混乱したルークはなすがままになってしまう。
何度も何度も繰り返されて、段々と頭の芯がぼうっとしてくる。

「…あのさ、アッシュ。部屋に戻らないか?まだ雨降ってるし。」
やがて、これからすることに考えが及んだルークは、進む手を制止し、ちょっと待ってと急いで言ってみる。
実際、こうして雨に濡れてしまったのもルークのせいだし、きちんと謝りたいと思っているのも事実だった。
「嫌か?」
「そうじゃなくて、ここじゃ…」
雨が降っているとはいえ、ちらちらと雲の影から光が垣間見える天気雨。
眩しいとまでは言わないが、紛れもなくここは昼間の外であることは確かで、こんな場所でするのはさすがに躊躇った。
「部屋じゃ、またメイドが来るぞ。」
そう言われてしまったのでルークが口をつぐんでしまうと、アッシュは肯定と捉える。
目の前の、厚手のカーテン越しの部屋の明かりを取るために大きく作られた巨大なクリスタルガラスの窓に、そのままルークを張り付けた。
ルークは窓に手をついて、押しつぶされるようなアッシュを後ろに感じた。
やがて、寄りかかってこられる身体だけではなく、意図を持った手が伸びてきた。
雨の中で、二人共もう相当濡れているのだが、張り付いた衣服を取り除くのはそれほど困難なことではなく、ルークの上着のボタンは器用に外されて、あっという間に肩が外気に晒された。

「冷た…っ…」
吹き抜けのバルコニーには屋根などは完備されていなくて、肩に雨粒が落ちてきて一瞬ぶるっと寒気を感じた。
「寒いか?」
「大丈夫……ひゃっ…」
こう答えている時にもアッシュはどんどんと脱がして、背中にもキスを施される。
艶やかに赤く染まるルークの肌が面白いくらいに震えるので、アッシュは赤い印の上にまた印を重ねた。
ルークが下の水たまりに落ちそうな肩から半分落ちた上着を必死で掴んでいる間に、アッシュは濡れっぱなしの胸の飾りに手をかざす。
最初は片時、触れるか触れないかぐらいだったのに、段々と遊ぶような手つきになる。
時に転がるように押しつぶしたり薄っすら引っ掻いたり、しつこいくらいだ。
ほのかに赤く立ち上がると、よりその行為は進む。
「ちょ、…そこ…ばっ、かり………」
ルークからすれば、いたぶるようなあまりのもどかしさに、さすがに声をあげて訴える。
「じゃあ、こっちがいいか?」
肋骨を触れながら進み降りるアッシュの手が雨で冷たくなっていた脇腹を触ると、ルークの内股が震え上がる。
そして、下肢まで落ちた右手によって、いつもより滑らかにスボンの前を簡単に開けられた。
「ち、がっ……そうじゃ…なくて。」
そういうことを言いたいわけじゃないっと、ルークは真っ赤になりながら虚勢を張って言う。
「何が違うんだ。」
既に震えているルーク自身を触りながら、くすりとアッシュは笑う。
いやならなぜ感じるのか、相変わらずこういうときのルークの言葉には説得力がない。
先端からゆっくりといじられて、ルークには抵抗の言葉も出ない。
後ろから触られていることは思った以上に視覚では予想もできないことをされて、困惑するばかりだ。
ルークが、ここがバルコニーだとかそんなことも忘れて、痺れて惚けた身体の行為に没頭しそうになったその時だった。
いっぱいな頭の中でも、僅かに残っていた理性に飛び込んできた音があった。



「………おかしいわね。ここにもルーク様は、いらっしゃらないわ。探しに行ったアッシュ様も見当たらなくなってしまったし。」
若い女の声が近くで聞こえる。
この距離感は、間違いなく自分の部屋にメイドが入ってきたのだとルークは理解した。
そういえばさっき部屋に走りこんできたときに、扉を開けっ放しだったことに気が付く。
マズイ。マズ過ぎる。
辛うじてバルコニーへの窓だけは閉めてあるが、鍵まではかけていないし、万が一こちらに近づかれたらと考えると背筋が凍る。
隠れようにもこんな場所では、隠れる物陰など微塵もない。
逃げようとして隣の部屋のバルコニーに移るなんてことをしても、逆に物音が立って気がつかれてしまうだろう。
どうするんだよ、アッシュ。と言いたいところだが、声も出せなかった。

「これを噛んでろ。」
ぐるぐると焦っているルークの耳元近くで、アッシュはそう囁いた。
なんだかよくわからないがルークは言われるままに、目の前に出されたアッシュの左手の人差し指を軽く噛んだ。
彼の綺麗な長い指に浅い歯型が出来るのは嫌だったけど、今はそんなことを言っている場合でもないと思ったが、次にアッシュのして来た行動は信じられないものだった。
ルークが言われたとおりにしたことを確認すると、アッシュは立ち上がっているルーク自身を刺激して先端から先走りして溢れ出した蜜を指にすくい取った。
まさか…とルークが思う間もなく、アッシュはそれを後ろの本来なら閉ざされている場所へと持っていき、擦りつけた。
「あっ…」
アッシュの指を噛んでいるからこそ、小さくなって出てきた声。
気付かれても構わないと言わんばかりに、指の第一関節からつぷりっと侵入して、どんどんと中を解し始める。
埋め込まれた最初はきつく締めつけていたが、指が増えるたびに順応になり、ルークの体中が身もだえる。
普段ならもっと丁寧にしてくれるのに、ある程度解けたところで、アッシュは自身をひくつくその場所に押し当てた。
「……ま、っ……て、アッ…シュ………まだ、…部屋にい…る……から…」
快感に揺れ動きながらも、必死にメイドの存在を主張し、浅い呼吸を何度も吐き出しながら、小さく言う。
アッシュだってまだ室内にメイドが居ることは分かっているだろうに、今ここで入れられたら声を我慢できる保証はない。
「だから、いいんだろ。それとも、見られる方が感じるか?」
そう言うと、アッシュはルークの腰を掴んで、ひくつく場所に宛てがる。
そして、待ち受けていたものをぐっと押し込んで割り開いた。
さらに腰を引き寄せると、みちっと近くなる。
「ンっ、あ…、んんっ……」
アッシュを受け入れてしまったルークが微かに鼻にかかった高い声を零してしまったのは仕方のないことで、咄嗟に抑えようとしてもこれが限界だ。

ざあぁぁぁ
雨が一層強くなる。
まるで二人為に振る雨のように、声もかき消えた。
雨が全てを隠すならいいのに…と周りに出来たベールを見て、ルークは思う。
「ぐちょぐちょだな。」
そんなときでもルークの身体は正直で、とろりと待っていたかのように中はアッシュに絡み付く。
まるで、合わせるかのように収縮するそこを、容赦なくなでられて攻められた。
いくら雨で音がかき消えるとはいえ、ぐちゅりと漏れた水音がルークの耳にも届く。
目の前の窓の先が厚手のカーテンと薄いレースのカーテンの二重構造で良かったとこれほど思ったことはない。



「…やっぱり他の部屋を探すしかないわね。」
そう独り言のように呟いたメイドの声が静かに響く。
ガチャ パタンッ




「………バレたらどうするつもりだったんだよ。」
完全に扉が閉まりメイドが行ってしまったことで、アッシュは咥えさせていた指を外した。
音が自由になりほっとルークの気持ちが緩む。
やっと安心したルークは、少し怒りながら言った。
「天気ぐらい把握している。今くらいの本降りになるのが大体この時間の予定だったからな。」
少し前まで常に海岸にかかる波のさざめきが耳に届いたが、今は雨の音しか聞こえないくらい激しい。
アッシュは簡単にそう説いた。
「っ、だからって…」
「少し、黙れ。」
そう言いながら、不意打ちのようにアッシュは深く根本まで入れ込む。
体内を蝕むようにルークの中はアッシュでいっぱいになった。
こぼれる涙は粒となるが雨と混じり床へと落ちる。
涙で視界が虚ろになるのもわからなかった。
ひどい雨の中でも濡れた響きを伴いながら、追い立てるように執拗なくらい繰り返される。
そんな時、感じる胸の場所も両方同時にゆるく指でなぞられて。

「あぁーーー…、ぁ…ふぅ…」
手をついたガラスが軋むくらい力が入り、ルークはのけぞって達した。
「はぁ、はぁ。」
我慢をしたこともあり、激しく吐息を乱して、指先が震えあがる。
なかなか息が整わないが、快感に耐えるのは声だけでいいのが唯一の幸いだ。
アッシュに顔を見られながらだったら、とても見せることはできない表情だったから。
身体が既に溺れていることが表情から読み取られていたと知られたら、恥ずかしくてとてもじゃないけどこんな場所では出来ない。
「いつもより早かったな。」
正面を向いていないのに、後ろのアッシュと視線が交差しながらそう言われた。
交差した場所はルークの目の前の窓ガラス。

「まさか、アッシュ…いつから……」
後ろを向いたままだから油断をしていた。
普段なら恥ずかしいから絶対我慢するのに、ガラスにうつった自分の顔を余すことなく全て見られていたとしたら…
驚愕の瞳を向けながら恐る恐るルークは聞いた。
「最初からだ、と言ったらどうする?」
言われた瞬間、ルークの頬がかぁっと赤く染まる。
ルークの一挙一動を見て、楽しんでいたのだ。
「もう、楽しみは終わりだな。」
くるりと後ろに抱きしめられていた状態から前を向かせ、アッシュは自分の方を無理やり向かせた。
そして、ルークの冷たい唇に噛みつくように引き寄せて口づけた。
背けられていた顔をやっと見れて、愛おしい。
口内の柔らかい場所を楽しんで、舌を甘噛みしたり、絡めたり。
思う存分、その感覚を堪能した。
一方、ルークは苦しすぎるキスに胸を叩く気力もない。
涙で輪郭がぼやけてきたはずなのに彼の顔はしっかりと見れたのは、近すぎるせいで。

やっぱり、好きだ。
後頭部を右手で押さえての深いキスをされると、ルークは自ら誘うようにアッシュの首に手を回した。
腰を擦りつけて続きをねだると、浅く抜き差しが繰り返される。
再び繋がった二人は激しく、内側を擦られる感覚に身体が素直すぎるルークは甘い痺れが止まらない。
律動が続く中、ふいに入れた周りを指だけで緩くなぞられた。


「くふぅぅ、……ア、…あ、ああーーー!」
苦しくて、湿った熱い息を出すのもやっとだ。
圧迫感に息巻くように呼吸が途切れると、ひくりと痙攣を起こして、ルークは立ったまま再び達した。
「くっ!」
背筋を駆け上がる何かの感覚。
達したことによるルークの締め付けは想像以上で、程なくアッシュも熱を弾き出して、ルークの体内に白濁の飛沫を散らばした。

これ以上ないというほど密着して、ひたむきに抱き締めあったまま、いつまでも冷めることのない熱。
雨が完全にあがるまで、二人は酔い続けた。











溜まっていた洗濯物がようやく陽の目を浴びた、晴れの翌日。
暇すぎる暇を持て余していたファブレ侯爵家の使用人たちは、忙しさに見舞われた。
旦那様と奥様がようやくコーラル城に到着なさったことは予想の範囲内だったが、それ以上に。
御子息であるルーク様が風邪をひかれたのだ。
幸い症状は軽く、数日寝ていれば治るとの医者の判断が下され、メイドたちは張り切ってお世話に奮闘したのだった。



看病のために自分の側だけに着いてくれるアッシュに、さすがにルークは怒ったのだった。















アトガキ
雨の中真昼間の外でエロ?の筈が、また趣向がずれてしまいました。
2008/09/04

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