ぴちゃんっ 雨とは少し違う水音が耳に入り、そしてその身にもそれをルークは感じた。 ん?何だ…この奇妙な感じは。 そのうちに、促されるように落ちていた意識が表面化してくる。 こんな覚醒は初めてで、錯覚に囚われるくらいだった。 やっと段々にだが目を開くと、見慣れない狭い空間がぼんやりと霧がかったように見える。 「風呂場?」 呟く自分の声が微かにその狭い空間に、こもった。 微かな淡く白い湯気が見えてその温かさも横肌で感じると、それが現実のものだとわかる。 ふとルークは自分の身体に視線を落とすと、何をどう考えても、裸だった。 簡易なイスに座っていて、背はタイル張りの壁にもたれている。 横には位置的によくは見えないが、おそらく湯を張られているのだろう湯船がある。 おい、ちょっと待てっつーの。なんだ、この状態は。 どうしてこんなことになったんだ? 「起きたか。」 冴えない使えない頭をフル回転していると、頭上から思いもかけない声が落ちてきた。 「アッシュ?!」 何度かしか面識は無い、しかも敵で在るはずの奴が目の前に居て、驚きとは少し違う声を上げた。 自分に非があるとは一ミリも思っていないルークとすると、同じ顔だし、イオンは攫うし、人の頭に話しかけたり操ろうとしたりして、全てがムカつく相手である。 生理的にも慣れそうにはなかった。 「何でここにいるんだよ?」 てゆーか、こっちは裸なのにあっちは服着てるという構図もおかしい。 アッシュはいつものようにキッチリとは着込んではいないが、軽装でルークの目の前に立っていた。 「覚えてねえのか?」 心外だなと言わんばかりに、アッシュは言葉を返した。 そう言われて、そういえば……とルークも記憶を手繰る。 えーと、何処まで記憶があるっけ? たしかアクゼリュスに行くために、ザオ砂漠を越えてケセドニアより船にてカイツール軍港に着いた。 急ぐ旅ではあるが、ここが最後の休憩も出来る場所でありこれから難所でもあるテオ峠を越えるので、ここから先は休みなしとなる。 今後のことも考えて、一晩止まってから出発ということになった。 ルークは疲れたという思いはあるが、一刻も早くヴァン 自分が何か言うたびに少しずつ仲間とは呼べない周りと、ぎくしゃくしていくのがルーク自身にも分かった。 誰かと一緒にいてもうまくかみ合いはしないから、ネガティブになって一緒にいたくはなかった。 割り当てられた宿の部屋を出て、ぷらぷらと当ても無く廊下を歩いていたら、同じ赤を見つけた。 「てめーは、アッシュ!」 バタバタとうるさくかけって、ルークは掴みかかろうとしてアッシュに迫ったのだが、それはあっさりとかわされる。 空振りをしたような拍子抜けを食らって、ルークは行き過ぎずにその場に立ち止まった。 「屑か。まだ、こんなところにいたのか。」 にらみつけるルークを涼しい顔で流して、アッシュは答えた。 「ケセドニアでは、よくも………」 聞きたい事が山ほどある。何で同じ顔なのかとか、目的は何なんだとか、もろもろ。 それを問い詰めるために再び、アッシュに聞き寄ったルークだったが…… 「ご主人様ー!」 「げっ……」 廊下に冴え渡る高く小さな声。 ルークにとってはウザいの代名詞でもあるミュウが、自分を探していることを認識して、げんなり声を出した。 今、見つかりたくなど到底ない。 慌てて辺りをキョロキョロと見回すと、真横に客室へと続く扉があるだけである。 ガチャリッ 「てめえ、何する!」 素早く扉を開けて、そのまま文句をいいまくるアッシュの法衣を引っ張って、二人で中へと入った。 このまま、少々身を潜める。 「しゃーないだろ。ティア達に見つかるのは、嫌なんだよ。」 ミュウの探し方は迷惑且つ過度ではあるが、恐らくティア達もルークを探しているのであろう。 休息が目的であるのに、満足に食事も取らずにさっさと部屋を出てふらついている今の状況を、良しとは思わないだろう。 全く自分は悪くはないという認識があるわけではないが、それでもお小言を聞くのはもうたくさんであった。 「俺を巻き込む必要はないだろうが。大体、人の部屋に勝手に入るな!」 借り物だとはいえ、勝手に自分の空間に他人が入ることをアッシュは嫌っていた。 どこまで非常識野郎なのだろうかと、アッシュは不機嫌が増す。 「おまえがいたら、隠れても場所言うじゃねーかよ。」 それに何と無く顔が似ているから、ルークがここにいますって言っているようなもののようにも感じた。 あのまま廊下に閉め出していても、いいとは思えない。 「ちっ…まあ、ちょうどいい。俺も忠告したいことがあったからな。 アクゼリュスに行くのはやめろ。」 一言区切ってからアッシュは、それを厳しく言い切った。 六神将としての任務であるイオンを攫って足止めをしたが、そのままイオンをヴァンに引き渡すのではそれこそヴァンの思惑どおりであるから、一行に戻した。 カモフラージュとして、ヴァンの目を向ける的として、今は自由に泳がせているが、アクゼリュスはやはりマズかった。 「はあ?じょーだんじゃねーよ。何でだよ。」 アクゼリュスこそが、この腹立つメンバーでの目的地である。 さっさと行ってちゃっちゃと終わらせたいのに、そんな命令形で頭ごなしに言われて、「はいそうですか。わかりました。」と納得できるものではなかったから、悪態をついた。 「黙れ!ともかく、ヴァンの言うとおりになるんじゃねえ。」 それに至るまでの理由はあるが、ヴァンを信頼しまくっているこの脳みそに言っても、良い方向に転ぶとはまるで思えない。 イライラする。 何も知らないレプリカが、こうやってのうのうと生きているのが。 二人の間に肌に突き刺さるような険悪ムードが流れているのを、ルークも感じ取った。 やがて、一歩だけアッシュがルークに迫る。 「な、なんだ…また操るのかよ?」 なんでアッシュが自分にそんなことを出来るのかわからない。 でも、好き勝手に動かされる打なんて冗談じゃなかったので、ルークは身構えた。 「はっ! そっちの方がまだマシだろうな。」 そう言いつつ、アッシュはルークの腕をぎりぎりと掴んだ。 素肌に痕が残るくらい強く。 突然の痛みにルークが顔をしかめていると、そのままベッドに荒く押し倒した。 ドスンッと簡易なベッドに腰からルークは落ちる。 「んだよ!やめろっつーの。」 訳が分からないままではあったが、ルークはジタバタと手足を使って迫り来るアッシュに抵抗する。 「力で負けるのは、くやしいだろう。」 必要以上に抵抗するから、躍起になって押さえつけた。 はりつけられるように、ルークがベッド上に止まる。 回線を使って自由を奪うなんてことはいつでも出来るが、そんなことの効力は実が少ない。 生意気なへらず口を黙らせるつもりだった。 どんなにこの存在が傲慢知己で腹立たしくあろうとも、殺すわけにはいかないし、不必要に痛めつけるわけにもいかない。 利用価値があるから だったら……… 完全同位体だとは知っている自分の身体は何とも思わない。 そのままルークの着ている服を、剥ぎ取り始める。 「いてっ! んなとこさわんな。 あっ… 」 呑まれた。 その後の記憶は曖昧。 あ、そんなことがあったと、鮮烈に一気に思い出してルークの頭は混乱した。 頭がぐるぐるとしてくる。 唐突すぎたから、記憶が飛んだのかもしれない。 でもだからといって、この風呂場で一人裸な状況とはあまりイコールでは繋がらない。 とりあえず逃げるべきなんだろうと、頭が働いた。 目の前で突っ立っているアッシュをのけるように、座っていたイスから立ち上がろうとした。 がくんっ 望んだ視点変換は得られず、がくりとそのままイスに舞い戻る。 足というか腰に全く力が入らない。 「うぁ……体中がいてえ。」 なんだ、この変な痛みは?おかしい。 じっとしていたから実感が全くなかったが、あちこち妙なところに妙な痛みが残っている。 感覚も、いつもより鈍い。 「足を開け。」 そんなに一人混乱しているルークなのに、アッシュは突然そう命令してきた。 「はあ?」 混乱しているのに更に不可解なことを言われて、ルークは間抜け声を出した。 端的にそんなことを言われても、聞き入れられるわけはない。 それぐらいの恥じらいは一応あるのだから。 しかしアッシュは、素直に従わないルーク両ひざをそれぞれ掴まえる。 抵抗の声も出させる間もなく、あっさりとそこを支点にバッと開かせた。 「な、な、な……何、すんだよ!」 次いで、ルークが驚きの言葉を出している間に、その身体を少し押したおすように持ち上げる。 ごつんと背中を後ろにぶつけた。 頭をぶつけなかったのは猫背気味だったのが、幸い。 浮き出た背骨に当たるタイルの冷たさがしみるが、そんなことより恥ずかしい体勢をアッシュの前に曝け出している方が、百倍は問題であった。 「中のものを、かき出すだけだ。」 かき出す? 何だそのえぐい表現は…とりあえず痛そうだな。 さらりと言ったアッシュの発言を悶々と考えていると、その瞬間にも手が伸びてくる。 「ぎゃー、なんだそりゃ。触んなよ!」 自分でだってろくに触れたことのない部分を、あっさりと触られた。 しかも、よりにもよって入れられようとしている。 最大限にこっぱずかしくて、ルークは盛大に喚いた。 「てめえの為にやってやってるんだ。少しは静かにしろ。」 狭い風呂場にルークの少し高い声が響いて、ある意味抵抗されるより耳障りだ。 苛立ちを外に出しながら、アッシュは言った。 「余計なお世話だ。つーか人に、んなトコ触られるくらいだったら、自分でやるっつーの。」 「自分で? なら、やってみろ。」 予想していなかったことを言い切ったルークに、アッシュは口角を吊り上げながら示唆した。 やれるものなら、やってみろ。と。 対してルークは、かなりその場の勢いだけで言った発言だったのだが、そう言われて引き下がるわけにもいかなくなる。 正直、何をすればいいのか意味わかんないが、恐る恐る先ほどアッシュが触れた部分に人差し指を差し入れてみた。 硬く閉ざされているべきはずなのに、つぷりとあっけなく簡単に指が進入することに成功する。 しかし、ルークには手探りすぎて第一関節程度しか入れる勇気はない。 それでも身体がふるふると震えて、はふ…と熱い息を吐き出す。 「………何、見てんだよ。」 行為に集中していると、やがてアッシュの視線が突き刺さっていることにルークは異を唱える。 もちろん、あまり人に見られて嬉しい状況ではない。 「全然、駄目だな。」 目を細めて観察していたが、一向に進展のないルークの動作を批評した。 わからないなりに懸命にやっている姿は見ものではあったが。 すっと、中に入れているルークの手首を掴んで、無理やり離させた。 ぽたり…と、ルークの指と共に少しだけ中のものが出てくるが足りはしない。 代わりにアッシュは自分の指を、ぐいっと深く差し入れる。 「…う゛……」 急激な圧迫感と苦しさを得て、ルークの声が漏れる。 少し触れられただけでも身体が震えたから、その手を強く払いのけることが出来ない。 内側から浸食されていく感覚に、どこまでも浸る。 アッシュの指が、内側の壁をえぐり出すと、中で満たされているものがとろりと外へと漏れ出る。 それを、何度も何度も繰り返す。 肌を伝うその慣れない液体の感触に少しの気持ち悪さがあるが、それ以上に中で動くアッシュの指の感触の方に敏感になる。 「あ、…い……んっ!……」 震えると、その長い髪がぱさぱさとゆれる。 目的を持っていて、他意はない筈なのに感じすぎて仕方がない。 ルークの敏感なところはわかっているらしく、アッシュがそこを執拗に強く押すたびにひっきりなしに歓声が上がる。 「我慢が出来ないだろ?」 意地の悪さをアッシュは、その口に出す。 かき出すという目的は一応終わったが、そのまま止めてはやらない。 緩く乱すだけルークを攻め立てる。 (早く終わってくれ) 骨の髄まで痺れる甘さに、そのことでルークの頭はいっぱいになる。 駄目だ。アッシュのわざとな緩い動作だけでは、全然満たされない。 もう、手が自然に。 我慢や羞恥なんて言葉は忘れたかのように。 ルークは、いつの間にかとろとろと先走りを流す自身に急いで手を伸ばした。 そのまま、たどたどしい手つきで自身を扱って、本能に従う。 「んぁ……あ、あっ…………あーーーーー!」 限界が近かった為さほどもせずに、ルークは淫らにアッシュの前で絶頂を向かえた。 「なあ、一体俺に何したんだよ。」 全ての後処理が終了したときに、ルークはそうアッシュに聞いてきた。 かき出しはしたが、結局ろくに身体が動けないので、問い詰めたようなものでもある。 「は?何言ってやがる。」 今更すぎるルークの質問に、アッシュは思わず似合わないふぬけた声を一瞬出した。 「一応、何したのかは覚えているけど、あれが何だったのかわかんねーよ。何か目的だったんだよ。」 アッシュが命令して、勝手に従っていたような気がする。 ベッドでも一応、無理やりという認識だったし。 だから行為自体の意味は知らなかったし、恥ずかしいという認識も薄かった。 ルーク・フォン・ファブレ 17歳。正味 7歳。 他に覚えることがありすぎて、性の知識は皆無だった。 「ちっ……どこまで世間知らずなんだ、使えない。」 少々頭さえも痛くて、アッシュは眉をひそめた。 辱めようとした目論見がまんまと外れた。 目的は果たされなかった。 自分のレプリカがどんなものなのか、見てみたかった。 が、コイツはただの馬鹿だった。 本当の馬鹿は自分か…… ここまでする必要は無かったはずだ。 何だ、何に流された? それ以上に何を求める? かどわかされたのは、こちらだったのかもしれない。 アトガキ 親善大使ルークを書きたかっただけです。すみません…… 最初は、朝チュンでした。後処理話は成り行きな筈(嘘) 2006/10/01 menu |