アシュルク的温泉旅行 1  










ル「アッシュ!俺と一緒に温泉に行こうぜ。」
ア「いきなり何を言ってる?」
ル「え?もしかして温泉知らないのか…ダアト近くに新しく出来た奴だよ。」
ア「それくらいはわかる。ザレッホ火山が活性化したせいで地下水が熱せられて出来た物だろう。」
ル「なんだ、知ってんじゃん。もう宿も取ってあるから安心しろよ。」
ア「勝手に馬鹿なことをするな。俺がいつ行くと言った?大体、公務が詰まっている。」
ル「それは、父上にお願いしたから大丈夫だよ。二人きりだから周りに気兼ねなく行けるし、きっと楽しいぜ。なあ、行こうよ。」
ア「おまえと二人なんて余計に冗談じゃないな。」
ル「………わかったよ。じゃあガイと行く。」
ア「待て。そこでどうして奴の名前が出てくる。」
ル「だって明日の宿だから、キャンセルもう出来ないから勿体無いし。」
ア「明日?どうしてそこまで無計画なんだ!他人に迷惑をかけるな。」
ル「ごめん…」
ア「謝ってる暇があったら、行く準備しろ。船に乗り遅れたら、容赦しないからな。」
ル「え…じゃあ。付いてきてくれるのか?」
ア「我が侭に付き合うのは今回限りだからな、わかったな。」



ル「あった!ここが予約した宿だ。」
ア「とりあえず、俺の傘をかえせ。全く…どう考えても雨が降ってるのに、どうしててめえは傘を忘れるかな。」
ル「あーやっぱり。相合傘は相当恥ずかしかった?」
ア「勘違いするな。俺の傘に入れてやったのは、無理やり休みをもぎ取って来てんのに風邪ひいたら、父上や母上に申し訳ないだけだ。」
ル「それは、ホントごめん。」
ア「それにしても、随分とこじんまりした宿だな。メインの温泉地はもっと通りが別だろう?どうしてここにしたんだ。」
ル「えーと、ほらっ。一応、俺たちお忍びで来てるから、ファブレ家の名前出せなくてさ。有名どころは全然予約取れなかった、とか。ははは…」
ア「…まあいい。確かに人目につくのは、よくないからな。突っ立ってないで、入るぞ。」

※「ようこそいらっしゃいました。ご予約のお名前をご確認させて頂いてもよろしいですか。」
ル「はい。ルーク・カーティスです。」
※「かしこまりました。お部屋にお通します。」
ア「おい…その名前はなんだ?」
ル「ん。偽名。ファブレは堂々と出せないじゃん。でも、あんまり突拍子もない名前だと呼ばれたときに気がつかないからさ。」
ア「だからって、何でよりにもよって眼鏡野郎のファミリーネームなんて、使うんだよ。予めそういうことは言え。」
※「お話中、失礼します。こちらが、お部屋でございます。ルーク・カーティス様は今回Cプランでご予約承りましたので、浴衣一着のプレゼントがお付します。机の上に置いてありますので、どうぞお持ち帰り下さい。では、ごゆっくりどうぞ。」
ル「うわーそんなサービスあったんだ。知らなかった。赤い浴衣なんて、貰ったの初めてだ。」
ア「………何、早速着替えてんだ。」
ル「雰囲気は大切だぜ。ほら俺、昔母上に教えてもらったから浴衣着れんだぜ。凄いだろう。」
ア「?その浴衣…女物じゃねえか!」
ル「そう言われてみれば、そうかもな。おかしいなーちゃんと男二人で予約したのに。」
ア「どうりでさっきからカップルとばかりすれ違うと思った。女物の浴衣一着プレゼントなんて、どう考えてもカップル向けのプランじゃねえか。」
ル「う゛…まあ、そんなに細かいこと気にすんなよ。それよりメインの温泉だぜ。ここの温泉は24時間いつでも入浴できるんだ。夕食の時間までまだあるし、先に温泉に入ろうぜ。」



ル「ラッキー。俺たち以外に客いないぜ。」
ア「あまりはしゃぐな。ここは総檜みたいだから、滑るぞ。」
ル「気持ちいー。アッシュも早く、早く!」
ア「人の背中にお湯をかけるな。言われなくても勝手に入る。」
ル「湯加減はどう?熱くない?痛くない?効いてる?」
ア「ここにきて、なんでいきなり挙動不審になる?」
ル「き、気のせいだよ。ほら、背中に刺激。ばしゃばしゃー。それと、もっとゆっくり浸かろうぜ。」
ア「おまえが騒ぎ立てるから全然ゆっくり出来ないがな。」
ル「ごめん…静かにしてる。」
ア「……………」
ル「……………」



ア「部屋に着いたぞ。後は歩け。」
ル「まだ気持ち悪い。」
ア「全く…別にしゃべるなと言ったわけじゃない。それなのに風呂にのぼせるなんて、駄目だったら駄目と言えばいいだろうが。」
ル「夕食、キャンセルしてよかったのか?俺はぐるぐるしてるから食べられないけど、アッシュだけでも食べに行けばよかったのに。」
ア「部屋に一人にして死なれちゃ困るからな。ほら、布団は宿の人が敷いたらしいから、そっちに倒れろ。」
ル「うん。って、アッシュ何やってんだ?」
ア「布団を離そうとしているが…どんなに引っ張っても離れねえ。何でだ?」
ル「あーホントだ。男二人だってわかってんのに、なんで布団がぴったり張り着いてるんだろうな。」
ア「このシーツ……二つの布団に大手の一枚が敷いてある。まさか…」
ル「こんなところまで、カップル仕様なのか。どうしよう。」
ア「たくっ…しょうがねえな。とりあえず、髪乾かしてやったんだから、早く寝ろ。」
ル「…わかった。でも、アッシュ。そこまで端っこで寝ようとしなくてもよくね?一応布団は別々なんだしさ。」
ア「おまえが畳の上で寝るんなら、真ん中で寝てもいいぞ。」
ル「それは、勘弁。おとなしく寝るよ。おやすみー」

一日目終了。








2007/09/24

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