アシュルク的温泉旅行 2  










そう、俺………ルーク・フォン・ファブレは幸せな筈だった。

俺は幸せだ。そう肯定しないといけないのか?
いつ気がついたのか、もうわからない。
物心ついた時には、俺の名前の前にはアッシュがいる…ということが事実としてあった。
アッシュの弟。
ファブレ家の次男。
勝つとか負けるとかそういうことではない。
眩し過ぎるアッシュの近くで、俺は永遠の二番手だった。
父も母も、俺とアッシュを分け隔てなく育ててくれたし、アッシュも面倒見よく俺に接してくれた。
でも、俺は弟でアッシュは兄という事実はかわらない。
ファブレ家を継ぐのは、嫡子であるアッシュ。
俺は家を継ぎたいというわけじゃない。
ただ、どうして俺とアッシュは同じ環境で育った子供なのにその一歳の差で、こんなにも周りの扱いが違うのだろうかと。
俺がどんなに頑張っても、アッシュの弟だからとその一言ですべてが片付けられた。
生まれた年だけは、俺の努力ではどうしようもないのに…
比較対象と全ての基準はアッシュ。
なんでそんなに比べたがるのだろう。
俺はここにいるんだよ?

気がつくと、優しい家族には本音を言うことは出来なくなり、そして家族以外の人物には上辺を見せ外観を整えるようになっていた。
それは、何でも率直にモノを言うアッシュと区別して欲しくて装おうとしたのかもしれなかったけど、だんだん
俺は俺自身がわからなくなっていった。
そんな、わだかまりの中で生きていた。





だから、いつしか
俺は永遠にアッシュしか見えなくなってしまった―――








2007/08/17

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